香川県内の元気な企業を訪問し、その企業が発展してきた過程と躍進を続ける今、そして未来への指針についてお聞きする「かがわ発!元気創出企業」。今回は、東かがわ市にある「株式会社FUJIDAN」を訪ねました。
軽くて扱いやすく、アイデア次第でさまざまな使い道がある段ボール。強度の高い特殊な段ボールなら、人間が乗ってもびくともしない。そんな機能性を生かした段ボール製の避難所用品を社会貢献の一つととらえ、香川大学との共同開発に取り組んだFUJIDANの本田社長と長谷川経営戦略室長に、お話を伺った。
ユニークなアイデアがものづくりの原動力
斬新なデザインや新しい機能性、きらりと光る遊び心。「おもしろい」をキーワードに、これまでにない発想の段ボール製品を次々と生み出しているFUJIDANは、付加価値の高いものづくりを得意とするパッケージコンサルティング企業だ。
世の中をアッと驚かせるアイデアを最大の強みに、設計・デザインから物流までの自社一貫体制を確立。小ロット多品種・オーダーメイドの柔軟かつフットワークの軽い対応で、首都圏をはじめ全国にニーズを拡大。右肩上がりの業績を堅持している。
近年の大きな取り組みの一つが、2023年から本格的に始まったBtoC向けのEC事業だ。副業支援サービスを通じて首都圏の人材から商品開発に関する意見を集めたところ、特殊強化段ボール製の家具・インテリア雑貨のアイデアが出た。
一般的な段ボールの耐荷重は上限約50㌔だが、同社の特殊強化段ボールは100㌔以上に耐える。箱形になると、同社の実験では車を乗せることさえできた。十分な強度があり、軽量で持ち運びやすく、組み立ても簡単で、最終的には資源ごみとしてリサイクルできる段ボール製家具のポテンシャルは高く、『どこでもこあがり』をはじめとする数々のヒット商品が誕生している。



赤ちゃん連れでも快適に!大学の知見に基づく商品開発
段ボール家具の知見を生かし、今年8月、かがわ産業支援財団の支援のもと香川大学と共同開発した「災害時備蓄用段ボール製品」の販売を開始。避難所経験者の声をヒントに、ターゲットは「赤ちゃん連れの家族」に絞り、ラインナップは新生児用段ボールベッド『dadda』・おむつ交換台『dapper』・授乳などに広く使える多目的部屋『danroom』の3種。
段ボール製の避難所用品はこれまでも自治体向けの販売実績があるが、「ややマンネリ化が否めない」と、経営戦略室長の長谷川さん。「各地で大規模災害が頻発する中で、我々にもっとできることはないか、新しいものをつくれないかと、大学とのコラボが実現しました」。
設計は人間工学や新生児医療の知見に基づき、生体機能を踏まえて赤ちゃんのケアがしやすい構造を追求。『dapper』にはケア用品やマザーズバッグなどを置ける棚を、『dadda』には小児科医の意見を反映して赤ちゃんがすごしやすい空気穴を設けた。専用のマットレスは高松市のふとんメーカーが手掛け、通気性とほどよいクッション性を備える。眠っている動物をあしらった『dadda』のグラフィックデザインは、香川大学生のアイデアをコンペ形式で採用したものだ。
今年8月から全国の自治体や公共・商業施設向けにECサイトで販売するほか、展示会などでもPRしていく。



自由に、クリエイティブに未来を担う人材を育てたい
「父は漆器の木地をつくる木工職人でした」と振り返る、代表取締役社長の本田さん。木材をたくさん扱っていたことから、東かがわの手袋の輸送用木箱を手掛けるようになり、やがてパッケージ素材が木から段ボールへと推移するのに合わせて、社名も「富士ダンボール工業」と改めた。富士という言葉は「日本一」への思いを象徴しているという。
その頃から約70年。高機能な段ボール製品で新しいニーズを開拓するかたわら、近年は高いデザイン提案力を生かしたパッケージ前の包装設計開発や、顧客の梱包作業の困りごとに対応する組立・出荷サービスといった、ものづくりの川上・川下にも積極的に視野を広げつつある。
こうした取り組みは、年々3%ずつ需要が減少し斜陽産業とも言われる段ボール業界で成長性を守る基盤となっているが、本田さんは「育んできた知見を生かして面白いものづくりができるなら、段ボールという分野にすら決してとらわれなくていい」と、あくまで自由に構える。
自身が次々とアイデアを出して開発チームを牽引してきた経験から、クリエイティブな人材を育てることを強く意識しているという本田さん。「私のノウハウを受け継ぐ若い世代の育成が今の課題です」と語っている。



株式会社FUJIDAN
会社概要
所在地 | 東かがわ市白鳥1820 |
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電話 | 0879-25-2381 |
URL | https://fujidan.jp/ |