香川県内企業・財団の取組

四国で唯一アセチレンガスの製造を担うガス総合メーカー 時代の流れを見極め、幅広く誰もが活躍できる場を目指して(四国アセチレン工業株式会社)

香川県内の元気な企業を訪問し、その企業が発展してきた過程と躍進を続ける今、そして未来への指針についてお聞きする「かがわ発!元気創出企業」。今回は、丸亀市川西町にある「四国アセチレン工業株式会社 丸亀事業所」を訪ねました。

各種可燃性ガスの中で最も高温で燃焼し、金属の溶接・溶断加工などに用いられる溶解アセチレンガスを四国で初めて製造した「四国アセチレン工業株式会社」。現在は高圧ガスの総合メーカーとして、酸素や窒素、アルゴンガス、炭酸ガス、LPガスの充填業務も担う。
最盛期には四国内に3社7工場あったアセチレン工場も現在は、同社の1工場のみ。四国最後のアセチレンガス製造工場として、これまでにはないような課題が持ち込まれることも増えたという。時代の波を捉え、女性や高齢の方々も共に活躍できる企業を目指し、未来志向で発展を続けている同社の取り組みについて、取締役総務部長である矢野由美子氏にお話を伺った。

四国最後のアセチレン工場である同社。西日本地区唯一の外国製アセチレン容器再検査場及び充填工場としての役割も持つ
四国唯一のアセチレンガスメーカーとして四国はもとより瀬戸内海沿岸部のガス需要に応えている

女性活躍を後押しするため「電動ボンベカー」を開発

ヨーロッパから日本へとガス切断技術が伝わったのは明治時代後期。以来、金属切断・加工の歴史はアセチレンガスとともにあり、産業の発展に大きく寄与してきた。特に戦後の1950年頃からは生産量が拡大し、1970年頃にピークを迎えた。その後、代替ガスへの転換や加工技術の変革が進むにつれ、次第に需要は減少。それに伴い四国にも複数あったアセチレンガスを製造する企業は同社一社だけとなったという。「アセチレンガス製造だけでは市場が減少するだけですから、事業を守るためにさまざまな取り組みを行っています」と話すのは取締役であり総務部長の矢野由美子さん。まだまだ男性社会であることが多い製造業において女性活躍を牽引する役割を担っている。
男性とは体格も身体能力も違う女性が全く同じ仕事をするのは無理があることから、女性が活躍する機会を得にくい製造業の世界。「ましてや高圧ボンベの場合はかなりの重量ですから、健常な男
性が運ぶのが当然だと思われてきました」と矢野さんはいう。女性であってもボンベが運べるボンベカーがあれば、高齢化社会にも有意義ではないか、そう考えた同社はかがわ産業支援財団の実施する知財マッチングを活用し大手自動車メーカーと「高圧ガスボンベキャリア」の面談を行った。

高圧ガスボンベはかなりの重量がある。従来は健康な男性が運ぶものとされてきたが、女性はもちろん高齢者や非健常者でも片手で運べるように開発されたのが、電動ボンベカー「キャ楽」。取材の際、記者がお試しで操作してみると手軽な操作性に驚いた

高齢であっても活躍できる「働き方改革」で人材確保

2021年6月、「高圧ガスボンベキャリア」のライセンス供与を受けた同社は、自社の技術を駆使し、独自のボンベキャリーを開発。電動ボンベカー「キャ楽」として商品化し、当財団の支援のもとで特許出願、意匠出願、商標出願を行った。
また、誰もが活躍できる企業を目指す同社は、高齢の方々の深い知見にも着目。容器センター(高圧ガス容器再検査場)において多人数による流れ作業方式を用いることで、作業効率アップにも取り組んだ。高齢になっても仕事をしやすいように作業環境や作業姿勢を改善するのはもちろん、家事や介護など、それぞれのプライベートに応じて勤務できるように勤務時間を自由裁量化。作業の3S化(単純化、標準化、専門化)することで、外国製アセチレン容器の再検査や高圧ガス容器検査における体制を改善した。「定年後に違う業種から転職された方も多くいらっしゃいます。前職の経験を活かしてさまざまな工夫をしてくださり、改善活動に対しても意欲的。それが既存社員の模範となっています。会社の雰囲気も和やかになりました」と矢野さんは言う。現在、容器センターのある丸亀事業所では5名の高齢の方々がライフスタイルに合わせた働き方で業務を担っている。

容器を再検査する容器センター。効率よく誰もが担える体制にすることで、自分のライフスタイルに合わせた勤務が可能になった。いずれは協働ロボットなどの導入もここで行う予定

実用的なシステムにより省力化、効率化を提案

溶接機材商社としての一面を持つ同社では、レアメタル、レアアース等、希少金属、希土類資源の需要拡大にも着目。世界的に遍在しているこれらの希少資源を有効活用するためには、廃棄物か
らの有用資源の回収が必須であると考え、銅資源回収を行う方法として、当財団の助成金を活用し、細口径廃棄電線から有用資源の銅を回収するドライ方式の実証プラントの試作に取り組んでいる
という。「銅資源回収を手作業で行うのは非効率。弊社は小規模の鉄工所のお客様が多いので、溶鉱炉のように大規模排ガス処理施設が必要な巨大プラントではなく、もっとコンパクトに廃電線から銅線が取り出せるシステムがあればと実証プラントをつくったところです」と矢野さんは話す。現在は、細口径廃棄電線の自動投入や銅資源回収など破砕工程の改善等を行いつつ、実用1号機の開発に着手。市販に向け、2024年4月の完成を目指している。
「さらなる人手不足社会、高齢化社会に向けて、協働ロボットの導入により作業の軽減、効率化を図っていくのも弊社の使命」という同社。次の時代を見据えながら、今後もガス総合メーカーを基幹として、幅広いニーズに応え続けていく。

凍結・破砕を行い回収するドライ方式プラント。従来の方法より環境負荷が少ない方法で効率的に回収できるという
災害時に各県の拠点までガスボンベを運びスムーズに供給ができるよう、常に充填済みのガスボンベを保管するなど、災害対策における重要な役割も担う
取締役総務部長 矢野 由美子氏
ガス製造・充填といった従来業務を基幹としながら、グループ企業はさまざまな分野へ展開。時代のニーズを捉えた事業を幅広く行っている

四国アセチレン工業株式会社

会社概要

代表者 代表取締役 大橋 正明 氏
本社所在地 丸亀市富士見町2-6-11
電話 0877-23-8585
URL https://shikoku-ace.com