香川県内企業・財団の取組

多機能な冷凍食品用パッケージで電子レンジ調理を新しいステージへ!(日生化学株式会社)

さまざまな商品デザインを可能にする新包装材
技術の粋を集めた二重フィルムで中までアツアツ!
商品化への意気込みを語る河野さん
開発にかける情熱は人一倍の赤松さん

開発力を活かして特許技術を改良

ショッピングバッグ製造からスタートした日生化学株式会社は、プラスチックフィルムを発泡させ、さまざまな機能を付与するベースとなる「発泡技術」、プラスチックの特質や品質を高めた「改質技術」、そして効率的な「プラスチックの再利用技術」の3本柱を核に、付加価値の高い機能性フィルムを手掛けるトップランナーだ。回収ペットボトルのフィルム化に世界で初めて成功したほか、美しい印刷が可能な発泡ポリエチレンフィルム「セルニック」など、独自の新素材を次々と打ち出す高い開発力が最大の武器。「社会に貢献し、何らかの役割を果たすパッケージをつくるのが私たちの使命です」と田中秀和代表取締役社長。

特に、同社が開発した「ハニック」は、大手食品メーカーのアイスクリーム包装などにも導入されている高機能な繊維状断熱フィルムである。低い発泡倍率で発泡スチロール並の熱伝導率を実現し、触った時に中身の冷たさ・熱さを軽減する独自の機能を持っていた。そこで、この機能を活かし、同社はまず「冷凍食品を包装のまま加熱調理するフィルム」の開発に着手した。

食品を密封したまま電子レンジで加熱調理すると、一般的なフィルムは加熱途中で破裂し、中身が飛散してしまう。そのため、他社メーカーは包装に「事前に空気穴を開ける」「特殊な外部加工処理で蒸気を逃がす」などの破裂を防ぐ仕組みを施している。これに対して、日生化学の包装は、発泡成形技術の強みを用いて「フィルムそのものに自然と細かい穴が開いて、程よい蒸気孔の役割を果たす」のが特徴的だ。短時間で均一に中身を温められる効果もあって、他社メーカーと差別化できる特許技術だったが、一方で製品化に向けては「表面に凹凸があり印刷しづらい」「強度が弱い」「製袋加工過程の熱で溶ける」という課題が残っていた。そこで、このフィルムを「第1世代」とし、今回はこれらの問題点をクリアする「第2世代」の開発を目指した。

地元企業と連携した新技術と思わぬ副次機能の発見

「注目したのは、ラミネート技術です」と、開発を担当した赤松昌幸さん。株式会社北四国グラビア印刷(観音寺市)と連携して、冷凍食品を開封せずにそのままレンジで加熱できる発泡フィルムの外側に、透明で熱に強く印刷しやすい高強度の延伸フィルムを貼り合わせる方法を考案した。延伸フィルムには裏からパッケージデザインを印刷しており、ラミネートによって食品包装に求められる「一重包装」も実現。第1世代と同じくレンジで加熱すると袋が大きく膨らむが、やがて外側のフィルムと内側のフィルムが『いい感じ』にはがれて蒸気を逃がすため、破裂することはない。

「フィルムがはがれて蒸気孔ができるのは、出来上がりを知らせてくれる『美味しさセンサー』でもあることに気づきました。市販の冷凍食品はメーカーが定めた時間どおり加熱しても、中身の加熱が不十分な場合がありますが、当社が開発したラミネート包装は、蒸気が抜けるまでレンジで加熱すれば、ムラなく中身まで加熱可能でした。これは思いがけない発見でしたね」と赤松さん。さらにピロータイプの包装なら、観音開きにすれば受け皿も不要。従来製品の「開封しづらい」「パッケージのままでは食べにくい」といった点の解消にもつながった。

この技術の確立により、製品化に向けて大きく前進し、国際特許もスムーズに取得できたことから、県内大手冷凍食品メーカーからも注目されている。しかし、ラミネート加工によるコストアップと2層のフィルムを適度に密着させるため、発泡フィルムの断熱性を犠牲にしたことが次の課題となっている。「スタンド型のパッケージがいい」「発泡層の影響で中身が見えないので、透明フィルムの方がいいのでは」といった営業担当者の意見も踏まえ、さらなる改良が続いている。

災害時なども視野に、商品化を目指す

「冷凍食品の加熱解凍から始まった開発ですが、その過程ではさまざまな発見がありました」と品質管理室長の河野博さん。例えば、冷凍食材と市販の合わせ調味料を開発した包装材に入れて、蒸気孔が開くまでレンジで加熱すれば、ひとつの料理が完成する。河野さんは「災害時の食事などにも応用できそうな手応えがあります。主にB to Bの商品ですが、まとめて調理もできるとなるとB toCも視野に入ってきます。今後はユーザーの認知度向上が鍵になってくるでしょう」と今後の展開を見据えていた。

「これまでも、できないと思われたことを打ち破ってきました。できないことをやってのけるのが開発の仕事。これからも課題を乗り越え、さまざまな機能を持つ商品を組み合わせて、用途拡大を模索していきたいです」と意気込む赤松さん。自由かつ柔軟な発想で新しい境地に挑む同社の開発力は、社員一人一人のこうした熱意が支えている。

新商品にかける熱き想い!

食品パッケージの研究開発は、将来の食糧問題のテーマにも絡んできます。これからニーズはますます高まるはずですから、製品として一日も早い完成を目指したいですね。香川という一地方で、地元の企業様としっかり連携しながら、当社の技術を世界に発信していきたいです!

代表取締役社長 田中 秀和 氏

日生化学株式会社

会社概要

所在地 東かがわ市馬篠1
電話 0879-25-3201(代)
URL http://www.nissei-grp.com
従業員数 97名
資本金 4,400万円
採択年度 平成27年度