香川県内企業・財団の取組

見えない成分を視覚化 最新特許技術を駆使した成分分析カメラ(株式会社Soilook)

新かがわ中小企業応援ファンド等事業を活用

インフラの老朽化計測に国際特許技術を活用

株式会社Soilookは、国立大学法人香川大学が保有する国際特許技術を駆使してコンクリート構造物や配管などの老朽化を計測、分析するシステムを開発しているベンチャー企業だ。代表取締役の西藤翼さんは、同大学でリモートセンシング技術の研究開発に携わり、現在は自社でより高度なカメラを開発している若き技術者である。

西藤さんは大学院を卒業後、共同研究を行っていたベンチャー企業に就職すると、すぐに3社連携の福島地域復興実用化開発等促進事業のプロジェクトリーダーに抜てきされた。福島県では小型化したカメラをドローンに搭載して撮影するなど、実用化の可能性が膨らんでいたが、3社連携の事業で、カメラの開発が思うように進まなかった。「開発を継続させるなら、自分の会社を作ろう」と、2018年に独立を決めた。

成分分析カメラを活用できる分野として注目したのが、老朽化が進む社会インフラであった。2012年の笹子トンネル天井板落下事故をはじめ、高度経済成長期に建設された全国の橋やトンネルなどのコンクリート構造物は50年以上経過し、塩害などにより劣化が進んでいた。更新するには多額の費用がかかるだけでなく、多くの技能者も必要となる。地域の暮らしを守るには、より高度な維持管理システムが必要であり、このカメラを活用すれば、少人数で検査が可能となり、費用も抑えられるのではと考え、財団が募集していた「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ」に応募したところ、最優秀賞に選ばれた。こうしてコンクリート構造物の塩害劣化検査サービスの事業化を目指すことにした。

劣化要因を2次元で同時計測可能に

検査に求められるのは、測定の精度である。コンクリートの劣化は、塩化物と水分によってコンクリート内の鉄筋が腐食し、ひびや割れが発生する。従来の検査システムは、1次元の測定で、原因の塩化物を推定するものではなく、劣化箇所を特定するには作業者の経験と勘に頼るところが大きく、労力とコストがかかっていた。

同社が開発した成分分析カメラは、測定対象となる構造物を広範囲に撮影し、劣化の要因となる塩化物や水分の分布状況を2次元で同時に計測できる。計測感度もこれまでのカメラの100倍になり、測定の信頼性、効率性が上がった。カメラを小型化したことで持ち運びできるようになり、ドローンに搭載して空撮も可能となった。コードレスでタッチパネルを導入し、操作を簡単にしたことで測定時間の短縮へとつなげた。

このように、発想をスピーディーに形にできたのは「ベンチャーであるからこそ。大手企業でも同様の技術開発は可能だと思うが、新規市場の参入には時間がかかる。ベンチャーは身軽に挑戦できる」と西藤さん。開発した成分分析カメラは必ず社会の役に立つとの信念を胸に開発を進めている。

ただ、ベンチャーであるため、事業化のためには資金面や経営ノウハウの課題をクリアする必要があった。そのため、各種助成金を活用したり経営セミナーなどを受講したり、財団の支援策などを継続的に活用している。特に、チャレンジコンペの最優秀賞の特典である「ネクスト香川」のインキュベートルームを2年間無償で借りることができたのは、研究開発に集中できる環境を整えることができた点で、とても大きな助けになったという。

コンクリートからガスへの新たな挑戦

塩害劣化分析サービスの試験運用を開始したが、市場調査をした結果、測定対象となるコンクリート構造物は、市場が大きく、事業化できるとインパクトがあるものの検査後の補修工事に多額の費用がかかる場合もあり、利益を出すまでには少し時間がかかると判断。

次に西藤さんが、ターゲットとして注目したのが「ガス」である。ほとんどの工場にはガスの配管があり、ガスが漏えいすると重大な事故に直結するため、計測するだけでも価値があり、需要も高い。令和2年度は「競争力強化研究開発支援事業」を活用し、ガスの漏えい場所を2次元で視覚化でき、複数の成分を同時に測定できる研究を進めている。この成分分析カメラは小型でドローンに搭載できることから遠隔操作が可能で、安心・安全に計測できるメリットもある。2020年9月に開催されたディープテックグランプリでは、日本ユニシス賞(企業賞)を受賞した。

「今はガスの分野に事業を一本化し、カメラの計測実績を積み上げてガス関連業界の認定をもらうことが目標ですが、軌道に乗ればガス以外の分野にも挑戦していきたい」と今後の展開を語る西藤さん。カメラの性能に興味を持った企業や自治体からも声がかかり始めており、将来的には、耕作地の土の栄養価を測定し、肥料の散布に生かすなど、農業分野にも事業を広げていきたいと考えている。人の目に見えない成分を見ることができる成分分析カメラは、これからの安心・安全な社会を見守る「人類の新たな目」だ。

新商品にかける熱き想い

成分分析カメラは、今まで人の目で見えなかった成分を視覚化して分析できるリモートセンシング技術です。この技術を使うことで、社会インフラや工場などで起こりうる危険を察知し、未来の安心・安全につながると考えています。さまざまな分野で活用できるように計測実績を積み上げて、事業のスキームを構築していきたいです。

代表取締役 西藤 翼氏

株式会社Soilook

会社概要

所在地 高松市林町2217-44 ネクスト香川205号室
電話 090-2826-0371
URL https://soilook.com
従業員数 1名
資本金 300万円