香川県内企業・財団の取組

創業以来、培った技術を生かし時代に合わせた新分野へ展開。「機能性表示食品」で食べて健康に。(安田食品工業株式会社)

醤油4大産地のひとつとして、古くから醤油製造を行ってきた小豆島。受け継がれてきた醤油と豊かな海の幸を生かしてつくられる佃煮も全国屈指の生産高を誇っている。この地で昭和23年の創業以来、品質に徹底してこだわり、“小豆島の味・香り”を大切にした塩昆布や海苔佃煮を製造してきたのが「安田食品工業」。多様なライフスタイルとともに、変化し続ける食生活・食文化に寄り添いながら、時代の
ニーズに合わせた商品を生み出し続けている同社のこれまでとこれからについて、秋長社長と藤本専務に話を伺った。

品質を重視しつつニーズに合わせて展開

醤油製造業を発端として、昭和23年に佃煮製造業として創業した「安田食品工業株式会社」。以来70余年にわたって、昆布や海苔、魚貝などの佃煮といった幅広いラインアップの佃煮を製造し続けている。特に塩吹昆布「さざなみ」の人気は根強く、豊かな風味と程よい塩加減が格別と業界でも高く評価され、全国のスーパーでも販売されてきた。特に、北陸地方や東北地方では「塩吹昆布といえば“さざなみ”」と言われるほどの知名度を誇り、季節の山菜や野菜に「さざなみ」を和えて自家製の浅漬けをつくるなど活用されているという。
味に定評があるのは、素材の旨味を最大限に引き出すため醤油や塩をはじめとする調味料をバランスよく配合し、乾燥具合も微調整しているから。また、厳しい自社基準を設けて品質をチェックするなど、品質管理にも力を入れている。「もともと、ごはんのお供として愛されてきた佃煮や塩吹昆布ですが、時代のニーズは少しずつ変化しています。塩分を控えている方や食品添加物無添加のものをと希望される方も増えてきている今の時代の食卓に合うような商品づくりを心がけています」と秋長社長が話すとおり、早くから減塩、添加物・保存料不使用など、市場のニーズに応えるかたちで、健康に配慮した商品づくりも心がけてきた。

さざなみ
ささなみ
大豆ミート
のり佃煮

時代のニーズを先読みし大豆ミート商品も開発

長くごはんのお供として日々の食卓になじみ深い存在である佃煮。平成に入り、誰もが健康を気遣うようになり、生活習慣を見直すことが大切という意識が高まるなど、日本人の食生活が変化していくのを実感していたという。「健康志向の商品をつくるようになって、25年ほどになります。生協などの取引先で減塩や保存料や添加物を不使用のものが採用されるようになったことがきっかけですね」と秋長社長。その後、香川県で研究開発された希少糖に、カルシウムや鉄分といった日本人が不足しがちなミネラルをプラスした商品を販売。「ミネラルは添加するけれど、不必要な添加物は使わないということが重要。愛されるものにする必要もあり試行錯誤しました」と藤本専務は話す。昆布佃煮、わかめ、味の花といったポピュラーな佃煮シリーズは、今では安田食品工業の定番商品だ。
健康志向とSDGs対応から、3年ほど前には、これからの畜産業界や輸入の状況を見越して、大豆たん白を使った商品を業界で初めて商品化。日本ではまだまだ認知度が低いものの、最近では大手メーカーも同様の商品を販売し始めた。大手が手がけるということは、それだけの需要が見込めるということ。そこで今年に入り、リニューアルも行い、新たな販路展開を目指している。

佃煮を食べることが健康につながれば

希少糖入りの佃煮に続く新商品の開発を考える中で、食物繊維のひとつ、難消化性デキストリンの機能性に着目し、佃煮を食べることが健康につながるなら、毎日の生活に手軽に取り入れやすいのではないかという発想で開発に着手。機能性表示食品は科学的根拠に基づいた食品機能性を表示することが可能
になる。「これまでにミネラルや希少糖入り商品を開発していたので、難消化性デキストリンを佃煮に入れるということ自体は、それほど大変ではなかったんです。小袋のパッケージに関するノウハウもありました。しかし、機能性表示食品としての届出という点がネックでした」と藤本専務。そこで、専門家の派遣や支援をかがわ産業支援財団に相談。機能性表示食品の届出に関する支援を受け、消費者庁への届出を行った。こうして、今年1月「おなかの調子を整えるのり佃煮」の販売がスタートした。ド
ラッグストアーなどの新規販路開拓も進みつつある。
「中小企業が今後生き残っていくためには、新たな商品開発や生産性・人材育成などを見直す必要があるが、自社だけでは限界がある。支援を受けられるのは大変ありがたいこと」と秋長社長。財団などの外部支援を活用しながら、これからもお客さまのニーズに合わせた商品を販売するために力を尽くす。

社長
秋長社長
専務
藤本専務
安田食品工業社屋の画像
安田食品工業の社屋

会社概要

所在地 小豆郡小豆島町安田甲103番地
電話 0879-82-2225
URL http://yasudanotukudani.com/company.html
従業員数 75名
資本金 3200万円