香川県内企業・財団の取組

知名度抜群の地元食材を前面に出した新たなご当地ラーメン(株式会社久保田麺業)

お土産の販売不振が気付かせてくれた地場商品の良さ

株式会社久保田麺業は、讃岐うどんや全国津々浦々のご当地ラーメンの名店の味を、自宅で手軽に食べられるパッケージで販売している。目を引くのはそのパッケージデザインだ。うどんやラーメンだけでなく、店主の写真や、店や地域にまつわる「物語」を掲載。外箱や袋を読んで楽しめ、顧客が納得して買うことができるような工夫がなされている。

同社ではこのパッケージデザインを、平成初頭の讃岐うどんブームの際に導入。人気店店主の顔が見えるお土産うどんは、ブームの波に乗って飛ぶように売れ、同社の売上の大きな柱となった。その後は自宅で食べられる全国の人気店のラーメンや、ご当地ラーメンの分野にも進出。讃岐うどんブームが落ち着いている中で、ラーメンの販売は売上の7割を占めるまでに成長した。

しかし、新型コロナウイルスの流行によって全国的に旅行が控えられるようになったことにより、土産物店での売上が激減。その際に取り組んだ課題が、地場商品の見直しだ。地元の県産品を前面に押し出した商品は、それ自体をアピールすると共に、商品の高付加価値化や自社ブランドの強化につながると考えたのだ。

そこで注目したのが伊吹いりこ。改めて言うまでも無いが、讃岐うどんのダシに使われており、その旨味には定評がある素材だ。その上、東京の有名ラーメン店でもスープに使用している店が何軒も出てきており、全国的な知名度もかなり高くなってきている。

また伊吹いりこをスープに使ったラーメンは、まだ他社が販売していなかったこともあり、県産品を使ったラーメンの主役は伊吹いりこに決定。今までに挑戦したことのない分野のラーメンの開発に、取り組んでいくこととなる。

伊吹いりこを活かすための長い道のり

開発は決まったものの、伊吹いりこを使ったラーメンの商品化への道のりは決して平坦なものではなかった。スープはだし醤油で有名な県内の老舗醤油メーカー(鎌田醤油株式会社)と共同で開発。過去にカニや鯛、エビ等、魚介系スープの実績があったため、当初開発は簡単だと思われていた。

スープはシンプルな味付けの方がいりこの風味が引き立つと考え、塩味を想定していたが、実際に作ってみると「いりこ感」がぼやけたものになってしまうという結果に。その後試作を繰り返すこと17回。最終的に一番いりこの味が感じられたのは、意外にも醤油味のスープだった。麺はスープがほど良く絡む、中太でストレートの生麵を使用している。

これまで同社では、商品開発を営業部の男性のみで行ってきた。しかし今回は、販売チャネルをスーパー等の量販店に広げていこうという思いもあり、直接の顧客となる可能性が高い女性社員を開発スタッフに参加させた。その結果、従来の男性社員だけだと出てこなかった「思うほどいりこの味がしない」というような率直な意見がどんどん出されるようになり、結果として商品のクオリティが上がったという。

いりこ味スープへの意見は社内だけにとどまらず、いりこの提供元である伊吹漁業協同組合の方々にもアドバイスを依頼した。試作品を実際に食べてもらうことで、生産者ならではの貴重な意見をフィードバックできたのである。それを元にさらに改良を続けた結果、最終的な商品には、伊吹漁協の方々から満場一致で太鼓判をもらうことができ、その完成度に自信を持つことができたという。

また同社は元々お土産店を主軸に商品展開していたため、食感の良い生麺でありながら3か月も常温保存できるラーメンを製造していた。このメリットはそのまま新商品に活かされ、量販店への展開の強い後押しとなる。

伊吹漁業協同組合 三好参事

新たな県産品を使った商品を

紆余曲折を経て、伊吹いりこのラーメンが発売されたのは、開発を始めてから2年余り後のことだった。新商品の「讃岐伊吹いりこラーメン」は、従来と同じ土産店向けの箱と、量販店向けの袋入りの2種類のパッケージを用意。デザインには夕陽に彩られた伊吹島の写真を採用した。

そのかいもあって、新たに開拓した県内外のスーパーでの売上が順調に推移している。購入者からの評判も上々でリピーターも多い。今後は新たな県産品を使った新商品の開発を進めると共に、今回は採用を見送ったオリーブイリコや香川県産の鶏チャーシューの再検討など、ラインナップ商品の改良にも取り組んでいく予定だ。

また同社は、自社工場の国際食品安全規格FSSC22000取得に向けた取り組みを進めており、かつ海外の展示会へも積極的に参加するなど、国内だけでなく海外市場への参入も視野に入れている。

(左から)営業部 中野氏、加藤氏、喜田氏

商品にかける熱き想い

この商品を食べていただいて、香川県と伊吹いりこのさらなるイメージアップに貢献できればうれしいですね。県内にはほかにも良い食材がたくさんありますから、それらを使った新商品も開発していこうと思っています。

営業部 次長 加藤 博昭 氏

株式会社久保田麺業

会社概要

(営業本部:綾歌郡宇多津町)
所在地丸亀市綾歌町栗熊西1093-1
電話0877-49-2626
URLhttp://kubota-men.jp/
従業員数106名
資本金1,000万円