香川県内企業・財団の取組

アレルギーを気にせず食べられる本格豆乳ジェラートをつくる(有限会社久保食品)

食べる人の健康を第一に考えた商品開発

かつての日本には、ひとつの町に1軒は豆腐屋があった。豆腐だけでなく油揚げやおから、お惣菜などを製造・販売しており、その地域の味にもなっていた。スーパーの台頭など社会情勢の変化により、町の豆腐屋の多くは姿を消しているが、今でも変わらずに、昔ながらの原料で製造を続けているのが有限会社久保食品である。

「くぼさんのとうふ」の名前で知られる同社の製品は、化学合成添加物や輸入食材に頼らずに製造していることで支持されている。製造コストも製造時間も余計に必要になるが、何よりも「食べる人の健康を第一に考える」という代表取締役の久保隆則氏の経営哲学により、安心・安全にこだわった製品を提供している。どうしても一般的な製品と比べて価格が高くなるが、それでも多くのファンに愛される日々の味として定着。県内スーパー等への卸販売のほか、宇多津町で直営店を運営しており、店内には豆腐や厚揚げのほか、化学合成添加物を使用していないコロッケなどのお惣菜が並ぶ。まさに昔の豆腐屋の姿が残されているのだ。2005年頃からは、スイーツの開発も始めた。豆乳を原液としたソフトクリームを始め、豆腐を使用したシュークリーム「ビニエ・リモーネ」やロールケーキ「ロートリ・フラーゴレ」など、イタリア風のスイーツを提供して人気となっている。

今回、そこに加わる新製品として開発にチャレンジしたのが豆乳ジェラートである。ソフトクリームよりバリエーション展開が容易で、季節の食材を使った味を提供できるのが強み。何より、常連客からの要望もあった。開発を担当した専務取締役の清水雅和氏は「新たな看板メニューになるポテンシャルがある」と考えている。

代表取締役 久保 隆則 氏

アレルギーを気にせずに食べられるスイーツ

豆乳ジェラートの開発に当たっても、同社のポリシーは変わらない。化学合成添加物は使用しないこと、またアレルギーのある方も食べられるように「卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに」の7大アレルゲンを排除して製造することをあらかじめ決めていた。「豆乳ジェラート」として販売されている製品はすでにあるが、清水氏が調べた限りでは、豆乳と牛乳の両方を使っているものばかり。純粋に豆乳で作っているものは見当たらず、ますます「うちで作る意義がある」と感じたという。

しかし、開発は簡単ではなかった。豆乳は牛乳よりも含まれる油分が少ないため、ジェラート特有のコクやねっとり感が出にくかったのだ。また、できる限り糖分を抑えて、自然な味を目指したことも食感を左右させた。糖分の割合はジェラートの硬さに影響し、糖分を減らすほど食感は硬くなる。ねっとり感と柔らかさ。この2つを同時に満たすバランスと製造方法を見つけることは困難で、何度も何度も試作を重ねてようやく「これが豆乳ジェラートの食感」と言えるクオリティにたどり着いた。

完成したプレーンジェラートに食材を加えて、新テイストを増やしていくことにも成功した。各食材を高性能のグラインダーでピューレ状に加工し、ジェラートと合わせてバリエーションを増やしている。エスプレッソ味やチョコレート味などは安定して製造できる一方で、かぼちゃなど季節の食材を用いることには課題もある。味としては間違いなく合格なのだが、食材によっては食感がバラつくものがあり、「まだ100点とは言えない」と清水氏は厳しく評価する。今後も試行錯誤を続けて最適な答えを見つけるという。

豆乳ジェラートは直営店で販売を開始しており、リピーターがつくほど評価は高い。清水氏が一番心に残ったのは、兄弟のうち一人だけアレルギーを持っているお子さんを育てている方から、「子ども達がそれぞれ好きな味を選んで、途中で交換しながら食べることが初めてできた」との声。兄弟なら当たり前の楽しみを提供することができ、大きな励みになっている。

販路の拡大とラインナップの充実

豆乳ジェラートは、直営店での販売だけでなく、スーパー等への卸販売やネット通販を視野に入れて開発を進めてきた。アレルギーに悩まされている全国の方に楽しんで欲しいとの思いがあるからだ。しかし、これら販路の拡大については現段階では見送っている。「カップ詰めや急速冷凍が手作業になり、想定以上に手間がかかる」そうで、冷凍発送の体制が整うまで、まだ時間がかかる見込み。ただ、遠方からの問合せなどから一定の需要は見通している。

今回、豆乳ジェラートがラインナップに加わった豆乳スイーツは、今後も種類を増やしていく。「カロリーの低いヘルシーなものを中心にしたい」という清水氏が考案中なのは、一般の人も、ビーガンの人も同じように食べられるスイーツ。同社らしい着眼点で、今から登場が待ち遠しい。

商品にかける熱き想い

中小企業にとっては新しいことへの挑戦には葛藤がありますが、今回は公的な支援が背中を押してくれました。これからの久保食品は、今まで以上にSDGsに力を入れていきます。お惣菜は紙パックで販売していますが、ほかのパッケージも土に還る素材に変更していきます。絵に描いた餅で終わらないように、できる限りのことをしていきたいと思います。

専務取締役 清水 雅和 氏

有限会社久保食品

会社概要

所在地綾歌郡宇多津町浜三番丁25-19
電話0877-49-5580
URLhttps://kubosan.base.shop/about
従業員数18名
資本金1,800万円