香川県内企業・財団の取組

燃え殻・ばいじんの再資源化は環境問題解決の光になる(株式会社アムロン)

環境問題を自社の問題として捉える

太平洋戦争の終戦から間もない1948年、鉄鋼問屋として創業したのが株式会社アムロンである。順調に業績を伸ばす中で加工業にも着手し、クライアントの要望に合わせて鉄鋼を加工した「部品」を提供するようになる。さらに、建築現場では付随する施工も要望されるようになり、設計・製造・施工までをトータルで行うエンジニアリング企業として成長した。現在は、四国一円を中心に、日本全国に営業範囲が広がっている。

鉄鋼を柱とする同社であるが、約25年前に環境事業部を立ち上げ、環境改善のための研究と技術開発を継続してきた。一見、無関係のように思えるが、鉄鋼材は製鉄の段階でCO2を排出するし、鋼材部品の大きな納入先であるプラントでは、水質問題や土壌問題がつきまとう。だから「環境問題は自分たちの問題だ」と捉え、SDGsが叫ばれるずっと前から、問題解決に取り組んできたのである。代表取締役の岩﨑巨樹氏は「地球を以前の姿に戻す」ことを大きな目標としており、「環境事業がこれからの事業の中心となる」と考えている。

その環境事業部が着目したのが「燃え殻・ばいじん」。ゴミの焼却などで発生する膨大な量の燃え殻・ばいじんが日々埋め立て処分されている。有害な重金属類を含むためリサイクルができず、埋め立てするしかないのが現状なのだ。ところが、国土の狭い日本ではすでに新たな埋め立て処分場の建設が困難である。また、脱CO2に向けた木質バイオマス発電所の増加に伴い、今後もさらに排出量が増加すると予想されている。そこで今回、燃え殻・ばいじんに含まれる重金属類を無害化することに挑戦した。その上でリサイクル資材として再生し、社会の中で循環させることを目指す2段階の取り組みである。

開発本部 環境事業部 事業部長 藤田 一平 氏

二通りの無害化と、再生資源への加工

今回の取り組みには、①「燃え殻・ばいじん」に含まれる重金属類を無害化、②無害化した「燃え殻・ばいじん」の再生資源としての加工という、2段階の目標がある。その①無害化については、二通りの方法でアプローチした。ひとつは重金属類が雨などの水分によって外に溶け出さないようにして汚染を防ぐ「不溶化処理」。もうひとつは、汚染の原因となる重金属類を取り除く「抽出処理」である。不溶化処理では、燃え殻・ばいじんに不溶化剤を添加して化学的に安定させることに成功した。また、抽出処理ではジェット水流と高速気流とによって原因物質の抽出を行う装置を開発。この独自技術によって、ほぼ全ての重金属類を取り除くことが可能になった。抽出処理の方がイメージ的には安心につながると予想されるが、コストは高くなる。環境事業部長の藤田一平氏は「用途や要望に合わせて使い分けることができる。二つの技術があることが強みになるだろう」と考えている。なお、無害化に当たって想定外だったのは、汚染が少ないと思われていた木質バイオマス発電の燃え殻・ばいじんの方が、むしろ多くの重金属類を含んでいたこと。山の鉱石などから溶け出した金属成分を、木が根から吸収し、木の中で濃度が高まっていたものと考えられる。木が育った場所によって金属の種類が異なることが予想されるため、不溶化処理では、金属の種類を問わずに使用できる不溶化剤を開発することになった。

一方、②無害化した「燃え殻・ばいじん」の再生資源としての加工については、まだ開発途上である。それでも、土木工事の「埋め戻し材」としての利用や、セメントと併用してコンクリートブロックなどの原材料に使用できることが分かっている。また、セメントを使わず、今回の再生材だけでコンクリートを作ることも可能である。いわばセメントフリーのコンクリート。強度は一般的なコンクリートには及ばないが、仮設置する道路など「いずれ撤去するものであれば、むしろメリットになる」と藤田氏。研究員の妹尾和晃氏と一緒に、製品化に向けて開発を進めている。

開発本部 環境事業部 研究開発室 研究員 妹尾 和晃 氏

循環型のエコシステムを確立させる

そもそも「燃え殻・ばいじん」に目を付けたのは、ゴミ処理問題の解決のためである。ゴミを社会の中で循環させるためにも、無害化と製品化を事業として成り立たせることが今後の課題となる。大まかな試算では、再生材によるコンクリートブロックを現状のブロック材と同程度の価格で提供できる見込みという。小さなラボでの工程を、事業として稼働するプラント規模に落とし込むのは簡単なことではないが、藤田氏らは着実に前に向かって進んでいる。まずは小さな自治体から「ゴミを循環させるエコシステムのモデルを確立させたい」と期待を寄せる岩﨑社長。ひとつモデルができれば、ほかの自治体が取り入れやすくなるはずだ。ゴミの処理は世界共通の課題。今回の再資源化事業は、日本と同じような問題を抱えるアジア諸国をはじめ、世界に広がっていくポテンシャルがある。持続可能な未来のために、意義のある取り組みである。

商品にかける熱き想い

開発は100%先行投資。リスクは覚悟していますが、公的なサポートがあるのは心強いです。ご支援には成果をもってお応えしたいと思います。今回のような新しい取り組みは、見通しがついてからが勝負。やるべきことをしっかりやり、今までにないエコシステムを日本に根付かせます。

代表取締役社長 岩﨑 巨樹 氏

株式会社アムロン

会社概要

所在地高松市末広町7-21
電話087-851-1551
URLhttps://www.amron.co.jp/
従業員数230名(グループ255名)
資本金1億円