香川県内企業・財団の取組

弾性ストッキングの課題を乗り越え市場に新しい価値を生み出す(香川シームレス株式会社)

ストッキングをもっと身近に

香川シームレス株式会社は、ストッキングのOEM生産をメインにした女性用レッグウエアの製造企業。1966年に創業して、ストッキングのニーズの高まりと共に成長してきた。最盛期は、外出せずに家で過ごすときも着用されていたストッキング。ところが、女性のパンツスタイルの普及や輸入品の増加により、ストッキングの国内生産量は1989年をピークに落ち続けて、2018年の時点で10分の1にまで減少した。コロナ禍により、リモート勤務が増えた状況は、ストッキング離れに追い打ちをかけている。

この逆風の中、約15年前から開発を始めたのが「弾性ストッキング」である。弾性ストッキングとは、足の血流改善を目的とした医療用ストッキング。足首に強い圧力をかけつつ、膝に向かって徐々にその圧力を弱めることで、足から心臓へと向かう静脈の流れを助ける。当初、製品の開発に成功したものの、医療機器の製造販売許可が無かったために販売を断念したが、2019年に許可を取得。自社製品として製造・販売できる体制が整った。

現在、弾性ストッキングは、むくみの予防・改善のための一般向け製品が出回っている。機能性ストッキングともいうべき製品であり、同社は、この市場に着目している。現状の製品には2つの課題がある。ひとつは、着圧の強さによる履きにくさ、脱ぎにくさ。もうひとつは、製造上の制約で薄手の生地となるため、保温性に欠けること。「潜在的なニーズはあるものの、大きな市場として育っていない要因にもなっている」と開発を指揮した専務取締役の金地晃司氏は分析している。今回は、この2つの課題を解決した上でサステナブルな製品の開発に挑戦した。

「折り返す」ことで構造的な問題を解決

最大の課題は「着脱しやすさ」をどのように実現するか。強い圧力をかけることで機能を果たすため、履きやすさのために圧力を下げることはできない。普通に考えれば解決困難な構造的な問題である。しかし、コロンブスの卵的な発想の転換で、解決の道筋を見つけた。「長いストッキングを折り返して二重にする」というアイデアだ。折り返した状態で規定の圧力を満たせばよいわけだから、従来品よりずっと緩い締め付けで着脱できるようになり、しかも二重になることで保温性も向上する。2つの課題を同時に解決できるのだ。試作を重ねたところ、高齢女性でも履きやすく、温かい製品が開発できた。保温性に関しては、折り返しによって空気の層が生まれ、防寒商品に相当する320デニールの保温性を実現している。

また、今回はサステナビリティもコンセプトのひとつ。長く履ける製品を目指して、斬新な機能を取り入れた。一般にストッキングなどのレッグウエアは、つま先とかかとが傷みやすく、そこから穴が空くことが多い。そこで、つま先部分とかかと部分にあらかじめカットできるゾーンを設けた。例えばつま先に穴が空いたらつま先部分をカットして、オープントゥにして使用できる。カットゾーンは、そこから糸がほつれないように特殊な加工を施している。どこを切ればよいか一目でわかるように色を変えており、それがデザイン的なアクセントにもなった。

サステナビリティについては、パッケージにも工夫がある。ポリエチレン袋や中敷き用紙を排除して、装飾された紙製の箱を採用した。ギフトにもふさわしい美しいデザインと大きさで、価格が高くなる弾性ストッキングの製品性とも整合している。しっかりとした作りの箱なので、「捨てずに何かに使おう」という心理が働くことにも期待をしている。

長さ、締め付けの強度、ほつれにくさと硬さのバランスなど「細かな調整がとにかく難しかった」と振り返る金地氏。携わった社員の熱意で課題を乗り越え、画期的な機能と優れたサステナビリティを持つ製品として完成することができた。

ストッキングに「長く履き続ける」価値観を

今回の製品は「hugkumi(はぐくみ)」とネーミングした。傷んだ部分をカットしながら長く履き続けてもらい、自分だけのストッキングとして育んでほしいとの願いを込めている。金地氏は「従来の使い捨てのイメージではなく、長く大切に履き続けるレッグウエアとしての価値を育てていきたい」と意気込んでいる。50代をメインターゲットとして、ドラッグストアなどの量販店ではなく、デパートや雑貨店などでの販売を想定しており、「hugkumi」ブランドを自分用としてはもちろん、大切な人へのギフトにできるストッキングとして成長させていく。同時に、もう少し求めやすいカジュアルなラインを揃えていくことも今後の目標となる。

スポーツ用、健康促進用、ストッキング、ソックス、サポーターなど、さまざまなシーンで使える製品の開発を考えている。同社は、機能性ストッキングの市場をリードする存在になりそうだ。

商品にかける熱き想い

今の市場にない「とがった商品」の開発は、リスクが高くて自社だけでは難しい。資金面のサポートがあったので、何度も試作にチャレンジでき、その経験が財産になりました。今後は、さらに製品開発を進めて、自社製品比率を高めていきたいと考えています。今まで以上に「香川シームレス」の名前が、前に出るようになると思います。

専務取締役 金地 晃司 氏

香川シームレス株式会社

会社概要

本社工場
所在地丸亀市飯山町川原825-1(本社工場)
電話0877-98-2571
URLhttps://k-seamless.co.jp/
従業員数130名
資本金6,000万円