香川県内企業・財団の取組

柿茶®をふんだんに使ったスイーツ 障がい者雇用ができる製造工程も考案(有限会社西内花月堂、柿茶本舗有限会社)

新かがわ中小企業応援ファンド等事業を活用

柿茶は今までになかったスイーツ商材

「柿茶って名前も素材としてもインパクトがありますよね。とても興味深い素材だと思いました」。そう語るのは、まんのう町の洋菓子店「西内花月堂」の西内聖一社長。柿茶はビタミンCをたっぷり含む、柿の葉のお茶。それを粉末にした柿茶粉末は、一見すると抹茶によく似ているが、苦味や渋味、そして旨味が違う。また、同じ緑色でも、比較してみると柿茶粉末のほうが濃く深い緑色をしている。最近では洋菓子に抹茶を用いることは珍しいことではないが、柿茶のお菓子は聞いたことがない。

その柿の葉の生産、加工から柿茶の販売までを一貫して手掛けているのが柿茶本舗だ。「6次産業化」などという言葉が世に登場する前から、柿茶一筋で取り組んできた。令和元年には創業70周年を迎えた歴史あるメーカーでもある。柿の葉を栽培・生産する農業者でもあることから、この農商工連携事業では農林漁業者の立場で参加している。柿茶本舗の井上信忠社長は「今まで柿茶をスイーツに加工するという発想は、なぜかなかったんです。どんなものができるのか、非常に興味がありました」と、事業の立ち上げ時を振り返る。

この連携事業は、単に柿茶を使ったスイーツを作ることにとどまらず、目標のひとつに障がい者雇用につながる基盤づくりを掲げていた。それは、新たに商品開発する菓子のうち、最低でも1つは柿茶本舗に隣接するカフェ「かきのは」で、障がいのあるスタッフが、簡単に製造することができるものを考え、柿茶とともに、その場でできたての柿茶菓子を提供することだ。すでに製造現場で障がい者雇用を実施している西内社長が井上社長に提案したもので、現在は障がい者雇用をしていない柿茶本舗にとっては、新しい取り組みへの準備の意味も含んでいた。

柿茶本舗の柿の畑は有機JAS認証取得済み。葉は手摘みされ坂出市の工場で乾燥させたのち、製茶される

スイーツ作りに最適な微粉砕に

まず最初に取り組んだのは、粉末柿茶の品質向上だった。スイーツの生地になじみやすくするため、従来の粉末をさらに微粉末にする。また、殺菌や加工条件を変えることで、粉茶としての質を高めつつ、スイーツ素材としても、色や香りがよく、舌触りのいいものを目指した。粉末加工は柿茶本舗では難しく、当初から外部委託することにしていた。ところが想定外の事が起こった。「最初に委託した外注先が諸事情で粉末加工ができなくなってしまったんです。これはまったくの想定外でした」と井上社長。また一から委託先を探さなくてはいけなくなり、事業は一時中断を余儀なくされた。当初1年間の事業で計画していたが、期間を半年間延長することになった。その後、山口県で条件の合う粉末加工会社が見つかり、事業は再開。そこでは既存粉茶の10分の1ほどの微粉末ができ、色や風味も格段によくなった。「柿の葉を殺菌する温度設定や時間を工夫することで、粉末後の退色も抑えられ、とてもいい状態の粉茶になった」と井上社長。

その粉茶を原材料に、スイーツを開発する西内社長は、どんな状態の粉茶がいいか、想定する菓子に合わせていろいろな要望を出していた。「最初の粉茶を使ってパウンドケーキを試作したところ、粉末の粒子が大きいため、生地にプツプツと点ができてしまう。それで、さらに細かい粉末をお願いしました」。しかし、粉末を細かくすればいいというものでもなかった。粉砕粒子が細かすぎると、生地を混ぜるときに粉茶が舞い上がりやすくなるばかりか、香りも飛びやすくなってしまう。「2度目の粉茶は最初に比べて約10分の1の粒子になったので、すっと生地に馴染む反面、空中に飛ばさないように注意が必要です」と、西内社長。粉茶の扱い方も身につくほど試作を繰り返した。

最終的に完成したのは「柿茶テリーヌ」と「柿茶サブレ」。テリーヌはホワイトチョコレートにバタークリーム、そして柿茶を10%加えたぜいたくな生地に干し柿を包み込んだ、高級感のあるスイーツになった。これは西内花月堂が製造する。また、サブレは、技巧的な開発よりも、障がい者でもオペレーションができる製造工程を重視して開発した。

左/既存の粉茶
右/既存の10分の1の粒子に加工した粉茶。加工方法も工夫を重ねた

状況を見ながら慎重に拡大していく

柿茶本舗の障がい者雇用につながるサブレの製造について、西内社長は「複雑にしないのがポイント」だと言う。最終的に確定した工程は、サブレの生地は西内花月堂が作り、1枚分を丸めて冷凍。それを柿茶本舗のカフェ「かきのは」で解凍し、半自動クッキー焼成機械(クッキー型が並ぶ焼き機)に並べて自動で焼き上げる。冷めたら柿茶粉末を混ぜ込んだ緑色のクリームと白いバタークリームを二層でサンドして提供する、というものだ。障がいの程度にもよるが、これならカフェの片隅でも簡単に作ることができる。しかし、井上社長は「これまで障がいをもった方を雇用したことがないので、もう少しいろいろな事例を見て私も勉強し、いい出会いを待ちたい」と、実際の雇用には慎重だ。

もうひとつ、需給バランスの面でも慎重に考えている。これまで柿茶として流通させてきた量を、柿茶需要があるのに菓子製造分に大量に回すのは難しい。現在、柿茶本舗の自社農園で生産している柿の葉は、香川県産1割と徳島県産が9割。今後、香川県の耕作放棄地を有効活用して5年で1.5倍の拡大を計画しているという。

しかし、事業を進める中で出した結論は「しくみと商品はできたが、拙速に拡販するものではない」ということ。障がい者雇用の目標も含め、連携両者でじっくり状況を見ながら「長い目で大事に拡大させていきたい」と考えている。

柿茶本舗直営カフェ「かきのは」内に柿茶商品を扱うショップを併設している

農商工連携事業に取り組んでみて

両者共に中小企業者でもあり、お互い事業計画や商品開発の話は理解が早く、それが信頼関係にもつながりました。新たな素材に出会え、勉強になりました。
西内花月堂 代表取締役社長 西内 聖一 氏(写真 左)

連携体というのは、お互い迷惑をかけられないので「計画通りに進めなくては」という気持ちの後押しになりますね。おかげで念願の柿茶スイーツができました。
柿茶本舗 代表取締役社長 井上 信忠 氏(写真 右)

※「柿茶」は柿茶本舗の登録商標です

有限会社西内花月堂

会社概要

所在地 まんのう町川東908
まんのう町吉野846(店舗)
電話 0877-79-3307
URL https://www.rakuten.ne.jp/gold/nishiuchikagetsudo
従業員数 26名
資本金 9,500千円

柿茶本舗有限会社

会社概要

所在地 坂出市江尻町1220
電話 0877-79-3307
URL https://www.kaki-cha.co.jp/
従業員数 11名
資本金 5,000千円