香川県内企業・財団の取組

フレッシュな果実味が冴える新手法を確立(西野金陵株式会社)

新かがわ中小企業応援ファンド等事業を活用

日本酒離れにストップをかける期待のニューフェイスが誕生!!

阿波の藍商人をルーツに、多角化を図りながら350年以上の歴史を誇る西野金陵株式会社。酒造業は江戸時代に金刀比羅宮のお膝元でスタートし、現在では、香川県内で現存する数少ない蔵元の一つである。金比羅宮の参道に創業当時の酒蔵を復元した「金陵の郷」は、連日多くの人でにぎわう人気ショップだ。

しかし、清酒業界では食の多様化などにより、若者を中心に日本酒離れが課題となっており、同社でも新規顧客の獲得が必要であった。このような時、桃の産地・丸亀市飯山町出身のOBから「香川県産の桃はうまい。桃を使って何かできないか」という声が上がったのが、リキュール開発のきっかけだった。いろんなお酒を楽しく味わう習慣がもっと広がれば、ひいては日本酒の間口拡大にもつながるという狙いが根底にあった。

当時、同社には既に「ゆずリキュール」が存在していたが、原料が県産ではなかった。香川県産の桃は品質がよく生産量でも岡山県に引けを取らない。「県産桃のリキュール」であることを重視したこれまでにない商品をつくり、消費者層を広げれば県産桃の振興にも貢献するはずであると考えた。

「正直、言うのは簡単だけど…と当初は思ったものです」と笑うのは、多度津工場の金子愛茜さん。奈良県の酒造会社で学んだことを香川県で活かそうとUターンした気鋭の若手だ。「甘いリキュールはたくさんあるし、大抵は香料で桃らしい風味に近づけています。しかし、私たちの商品は甘さ控えめ、フレッシュな風味と桃らしいとろみを残した口当たりを目指しました」と振り返る。

1,463円(税別)
金陵の郷(直営のアンテナショップ)や同社オンラインショップ
(http://www.nishino-kinryo.co.jp/store/)などで販売中

新感覚のとろみで既存商品と差別化

桃は水分が少なく、そのままジュースにすると酸化が早く、色も悪くなってしまう。そこで金子さんは加工業者と相談し、桃をいったん冷凍してからすりつぶしたピューレを使うことを考えた。この方法であれば、果肉の繊維質が、とろみにつながり、なめらかな舌触りを実現することができ、さらに色も変わりにくくなった。

しかし、おいしさを考えると、どうしてもピューレの比率を高めたかったが、この比率が高くなるとピューレが沈殿してしまう問題があった。さらに、とろみの影響により、瓶へ充填する際に、充填ラインに繊維質が詰る問題もあった。そこで、裏ごしを行い、より繊維質を細かくし、詰まりを防ぐため、瓶へ攪拌しながら充填することで問題を解決した。さらに、使用する香料は数ある中から、みずみずしく自然なものを選定し、濃度も調整。試作品を醸造課長に利き酒してもらい、「ちょうどいい」と評価の高いバランスを追求し続けた。

こうして、完成した生の桃を食べた時のほのかな渋みや酸味を残すフレッシュな味わいは、金子さんが目指したリキュールそのものだった。また、パッケージデザインを企画担当者と相談し県内のデザイン会社に依頼した。新商品への期待の高さの表れである。「こういう費用面でも、助成金に助けられました」と金子さん。桃の果実感を魅力的に打ち出す洗練されたデザインに、フロストのボトルがやわらかい風情を醸す。商品名は「さぬきのももも」。『うどんだけじゃない、讃岐の桃もよろしくね』そんな思いを込めている。

平成28年8月の発売当初は限定商品だったが、人気を受けて増産が決定し、すぐに毎月製造するレギュラー商品となった。さらに、かがわ県産品コンクールの最優秀賞である『知事賞』および農林水産省の食料産業局長賞をそれぞれ受賞したことから知名度向上の追い風となった。

「さぬきのももも」のおすすめの飲み方はロックやソーダ割。さらにレモンを絞るとさっぱりとした飲み口になって、男女問わず親しみやすい味わいだ。県内の県産品アンテナショップをはじめ、百貨店のお中元・お歳暮などにもラインナップ。桃を縁起物として好む中国人にも好評だという。「私だけの力ではなく、工場全員が『自分が携わった』と胸を張れる商品にしたかった」と金子さん。香りや味、ラベルデザインまで、商品の完成までには多くの人の意見が反映されており、社員が購入することも多い。

品質保持を課題に、日本酒全体を振興

手づくり感が魅力とはいえ、着色料や保存料を一切使わない分、どうしても劣化が課題となる。これからの課題はフレッシュな味を保ちつつ、劣化を防ぐことだ。桃農家との連携も進んでいて、「朝5時に起きて産地の収穫も手伝いに行きました。原料の品質などについて学べるいい機会です」と金子さん。

同社のリキュール全体の売り上げは伸びていて、姉妹品の売れ行きも好調。「とはいえ日本酒メーカーですから、リキュールをおいしいお酒の入口として、日本酒を若い人たちにPRしていきたいですね」と金子さん。しばらくは「さぬきのももも」をはじめ、一つ一つの商品のクオリティ向上に努めるつもりだと語ってくれた。

新商品にかける熱き想い!

香川県で『メイド・イン・KAGAWA』をつくりたいと思いUターンし、第一歩を刻みました。開発中はハラハラすることも多かったのですが、たくさんの方に協力頂いて人気も安定しました。今回の取り組みではデザイン会社など新しい外部とのつながりも生まれました。この実績を糧に、日本酒でもしっかりとおいしさを打ち出していきたいです!

金子 愛茜 氏

西野金陵株式会社

会社概要

所在地 仲多度郡琴平町623
電話 0877-73-4133
URL http://www.nishino-kinryo.co.jp
従業員数 210名
資本金 2,700万円
採択年度 平成27年度