香川県内企業・財団の取組

里山の鳥獣対策と老舗茶舗の情熱が日本茶の世界に風穴を開ける「マルベリーティー」に!(有限会社西森園、JA香川県 四国大川女性部桑加工研究グループ)

桑加工の現場と茶商が手を結び、連携事業ならではのこだわりの商品が生まれた

さわやかな緑色が美しく、甘みととろみがある「さぬきマルベリーティー」が、平成28年度かがわ県産品コンクールで優秀賞を受賞した。「昔から漢方の世界では、血糖値を上げないお茶としても注目されてきた桑茶ですが、実際にその鮮やかな緑色とまろやかな飲み心地にすっかり魅せられました」と語るのは、英語で桑茶を意味する「マルベリーティー」と名付けた(有)西森園代表の西森氏。

「さぬき市の広報でも紹介されましたが、昔から桑茶は不老長寿の妙薬などとも言われるほどで、買ってくださった方から、次々とその効果を報告いただき、驚くことばかりでした」と語るのは、桑の葉を収穫し、荒茶を製造している桑加工研究グループ代表の多田氏と近藤氏。

グループの桑茶への取り組みは、平成19年、荒廃した桑畑を餌場にする猿等の鳥獣被害に悩むさぬき市から、桑畑を手入れして桑茶を製品化してみないかと、四国大川農協(現JA香川県四国大川)女性部に提案があったことに始まる。最初は尻込みしていたが、市民のためになり、体に良いお茶と聞いて、新たに挑戦してみたいと、有志で桑加工研究グループを立ち上げた。そして、山の斜面に広がるイバラが幹に絡みついてジャングルのように生い茂った桑畑に分け入り、必死の思いで低木化した。衣服は草の実だらけ、イノシシの穴に落ちるなど、桑畑に悲鳴が響くこともしばしばだった。ようやく桑畑3分の1(約1ha)ほどを再生し、収穫できるまでになった。例年、5月末から7月にかけ、メンバー総出で、新たに40~80cmに伸びた枝葉を収穫し、さらに葉だけを一枚一枚手で摘み取る作業を経て、製茶加工場で緑茶風の荒茶をつくっている。「すべてが手作業ですから、最初はのんびりと桑茶を作っていくつもりでした」と多田代表は当時を振り返る。ところが、消費者からの反応が良く、桑茶の需要が増加していった。そのような時、取引先から(有)西森園を紹介された。

一方、昭和17年創業で、高松市内に店を構える(有)西森園は、日本茶の売上が伸び悩む中、日本茶専門店としての先行きに不安を感じていた。「次世代に安心して託せる商売とは」と問い続け、(有)西森園ならではの商品を展開したいと考えていたところ、桑加工研究グループの良質な桑茶に出会い、可能性に賭けてみたいと思った。

▲斜面に広がる桑畑。初夏に収穫した桑の葉は、束にして菰で巻いて坂道を担ぎ出す。なかなかの重労働。
▲収穫した桑の枝葉を一面に広げて、乾かしながら若葉を1枚1枚摘み取る。

季節や世代を問わず愛飲できるノンカフェインの「桑茶」

「農商工連携ファンド事業に採択されたことで、お茶屋のイメージに捉われない思い切った商品を追求し、お客さまに選ばれる商品について踏み込んで考えるようになりました。また、連携事業ですから、生産者の皆さんの仕事が正当に評価され、生産現場を守る持続可能なサイクルを作り上げる責任も感じました」と西森氏は語る。

その言葉どおり、ブランディング開始にあたり「生産者がイメージできる商品にしたい」と繰り返し検討を重ね、50にも及ぶ案の中から桑加工研究グループのメンバーがモデルという『可愛いおばちゃん』のイラストのパッケージが完成した。

ほのぼのとしていながらインパクトがある、懐かしいようで全く斬新なパッケージデザインは、「お母さん手作りの安心できる天然の桑茶」、「いつまでも元気に働けそうな飽きのこないお茶」という製品を物語る優れたものとなった。また、桑茶そのままの「プレーンタイプ」、おいでまい(県産オリジナルブランド米)を焙煎ブレンドした「玄米タイプ」、瀬戸内レモン風味の「レモンフレーバータイプ」の3種で展開。ティーバッグにすることで、マグカップでホットもアイスも手軽に楽しめる商品にした。

平成28年夏、自社サイトに掲載したところ、全国版の女性誌に取り上げられたことをきっかけに知名度が上がっていった。さらに、秋以降は県内の地場産品の売り場を中心に販売を開始し、12月からは本格的に全国展開を始めた。

▲さぬきマルベリーティー
▲ 水色の美しい「さぬきマルベリーティー」は、ティーバック様式。水に入れることもでき、夏にも重宝する。ノンカフェインである上に天然ミネラルが豊富で、妊婦さんも含め世代を超えて愛飲できる。

地域に根差した商品になりたい

(有)西森園では現行の3種類に加え、新たに香川県産の原料をブレンドしたフレーバーも展開予定。また“桑茶ポップコーン”などの商品開発も進めている。

一方、女性部では、桑茶の“かりんとう”などを販売開始しているが、今後も新しい商品を検討したいと考えている。

今回の連携事業で視野が広がったというメンバーは、多くを学び、とことん質にこだわる大切さも知ったという。今後の課題は、いかに次世代につないでいくかである。農業法人として地域に根付かせてほしいという声もあり、“おばちゃんたちの手仕事”という良さを失わず、企業化する道も検討している。

お茶屋と農家の夢が込められた「さぬきマルベリーティー」は、街にも里にも元気を広げるお茶である。

▲かあさん桑茶

新商品にかける熱き想い!!

鳥獣害の被害を抑え、休耕地の再生になり、健康づくりにもつながる桑茶。こんなすばらしいお茶があることをたくさんの人に知ってもらいたい。とにかく一度飲んでもらいたい。

有限会社西森園 代表 西森 丈士 氏

桑畑は地元の宝です。自分の健康は自分たちで守るという思いからも、働いて元気になり、一服して元気になるこのお茶を永く愛してほしい。

JA香川県四国大川女性部
桑加工研究グループ
代表の多田 忍 氏と近藤 直子 氏

有限会社西森園

会社概要

所在地 高松市大工町5-6
電話 087-851-4849
URL http://www.nishimorien.com
従業員数 6名
資本金 300万円
採択年度 平成26年度

JA香川県 四国大川女性部桑加工研究グループ

会社概要

所在地 さぬき市寒川町石田西1525(JA香川県旧四国大川支店内)
電話 0879-53-2222
URL http://www.kw-ja.or.jp
グループ員数 34名
採択年度 平成26年度