香川県内企業・財団の取組

ARで魅せる香川のコアなコンテンツ(Traditional Apartment)

新かがわ中小企業応援ファンド等事業を活用

デザインにもこだわり、旅の思い出の象徴となるアイテムを目指した観光パンフレット

他にはない面白さを発信する宿泊施設

瀬戸内国際芸術祭、LCCアジア便の増加などで、香川県を訪れる観光客は国内外問わず増えている。観光客を受け入れるゲストハウスとして、平成27年にオープンしたTraditional Apartment(トラディショナル・アパートメント)。オーナーの内田大輔さんは、元銀行員だ。まだインバウンドという言葉もなかったような時代、当初は「海外から物を輸入して日本で売る」というビジネスでの脱サラをイメージしていたという。転機はドイツに住む親戚を訪ねた時のこと。「ドイツ一周旅行でいろんな宿を見て、『今は民宿が流行っている』と聞きました。特にインスピレーションを受けたのはベルリン。若手が工夫した宿が多くて、彼らのパワーが街にも波及しているように見えたんです。その時、高松市内に祖母がアパート物件を所有していたことを思い出し、これだ!と思いました」と振り返る内田さん。

古いアパートの1部屋を貸し出すところからスタートして、少しずつニーズが増え、現在は高松市内に3棟を確保。それぞれ「和風のアパート暮らし」「ベルリンで過ごした部屋」「2世帯住宅で一軒屋暮らし」とタイプの違う打ち出し方で物件のイメージを確立し、稼働率約60%、毎月約100人を受け入れている。

当初は宿泊客の受付や部屋の清掃などをすべて一人でこなしていたという内田さん。観光パンフレットがよくゴミ箱に捨てられていることに気づいた。「自分が旅行に行った時は、パンフもかっこいいから持って帰るんです。思い出になるし、誰かに旅のことを話す時のツールにもなる。何よりせっかく作ったのに、捨てられたらもったいないですよね。じゃあ持ち帰ってもらえるかっこいい冊子をつくってしまおう、と考えました」。宿泊施設は旅行者が必ず利用する場であり、情報発信にはピッタリ。宿に独自のサービスがあれば付加価値となって、稼働率安定にもつながる。外国人宿泊客らの「一般的な観光パンフにはない情報がほしい」という声も、内田さんの背中を押した。

予想以上のパワーを発揮する動画コンテンツ

クラウドファンディングを立ち上げ、オリジナルの観光パンフレットを制作したのがオープン2カ月後。ちょうどAR※技術を知ったタイミングだったこともあり、「マーカーをつけた写真に携帯端末をかざすと、写真を撮影した場所で撮った動画が再生できる」という独自のアプリを開発して、冊子と連動させた。冊子そのものは写真集のような体裁で、単品でもハイセンスな美術本として楽しめるが、ARによってさらに豊かな情報体験が可能になる仕掛けだ。

第1弾は香川県全体、各地域を紹介する内容。希望する宿泊客に無料配布し、好評を受け半年で1000部を配り切った。続く第2弾の構想は、瀬戸内国際芸術祭を意識して「島」がテーマ。瀬戸芸ではスポットが当たりにくい島に対象を絞って、瀬戸大橋のお膝元、与島をメインコンテンツに据えた。

「私たちがお客さまに提供したいのは、最高の経験です。たとえ宿からアクセスが難しい場所であっても、写真や動画で現地の雰囲気を伝え、香川県にはこんな場所があると知ってもらうきっかけにしたい。それが『行ってみたい』につながれば、香川県の観光客・宿泊者数も増えるはずです」と内田さん。普段はパーキングエリア内しか知らない与島の新しい風景を求め、瀬戸大橋と島の歴史を追いながら、知られざる島の表情をカメラマンとともに1年がかりでカメラに収めた。

思いがけない収穫だったのは、島の人たちとの出会い。さまざまな協力を仰ぎ、写真や動画にも登場してもらう中で、住民たちの意識が変わってきたという。「撮影した動画を編集してショートムービーも作り、島で上映会を開催したんですが、住民や元住民の皆さんが200人も集まってくださり、驚いたり喜んだりしてくれました。島の活性化につながれば、と思って作ったコンテンツが島の人たち自身にも作用して、島の将来を考える熱い空気が生まれています。映像には大きなパワーがあることを痛感しました」と、内田さんも予想以上の効果に驚く。

テイストも滞在スタイルも異なる3棟で、旅人のさまざまなニーズに対応
ベルリンをイメージしたTHE BANKSビル(高松市常磐町)
一軒家で和風ステイ(高松市茜町)
大人数でもゆったり過ごせるラウンジ(高松市塩上町)

ソフトを充実させ、面白いまちづくりに貢献

内田さんには、まだまだ発信したい香川県の魅力がある。「ハードはひとまず3棟で十分、これ以上増やすと経営や効率を考え始めて『面白さ』が薄まってくると感じています。これからはソフトの充実に力を入れたいですね」。観光パンフレットの販売、旅行会社とタイアップしての島ツアーなども検討しつつ、第3弾のパンフレット作りにも意欲的だ。

「海あり山ありの香川県の食文化も動画にすると面白そう。香川県のコアなところを発信していく企画を充実させたいですね」と語る内田さん、イメージする香川県の姿は「地区ごとにカラーがある街」だという。「面白い街は、あそこはアート、ここは食、といったエリアごとの特色がしっかりあります。高松市を、香川県を、そういう個性ある街にしていくのが目標です」と展望を語ってくれた。

※AR とは、拡張現実。コンピューターを利用して、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する技術。

新商品にかける熱き想い!

仕事で大切にしている祖母の教えは、利益よりも楽しさやワクワク感を重視して、何より自分が楽しむこと!島の人たちとの出会いは今回の事業の最大の成果だったと思います。この基盤を大切にしながら、東京五輪開催の2020年をめどにソフトの充実を図りたいです!

ゲストハウスオーナー 内田 大輔 氏

Traditional Apartment

会社概要

所在地 高松市塩上町1-3-7
電話 090-2893-2640
URL http://traditional-apt.com
従業員数 2名
採択年度 平成28年度