香川県内企業・財団の取組

島育ちのかわいいオリーブ盆栽をおみやげの新定番に(penée(パンセ)、株式会社小豆島岬工房、花澤明春園)

デザイナー監修の洗練されたパッケージ

小豆島を象徴するお土産をつくりたい

穏やかな瀬戸内海と海風に揺れるオリーブは、地中海を思わせる小豆島の風土を象徴する風景だ。この島でオリーブを栽培したくて東京から移り住んだ西脇美津江さんは、フラワーショップ「pensée(パンセ)」のオーナーであり、商材としてのオリーブの新しい可能性に注目していた。「ポットの苗木は味気ないし、お土産にするにはかさばり、品質も今ひとつです。手軽なお土産としてすぐに飾って楽しめる、小さくても絵になる観賞用オリーブがつくれないかと考えていました」。

盆栽教室に参加したことをきっかけに、「オリーブミニ盆栽」というアイデアにたどり着いた西脇さん。香川県は全国一の黒松盆栽の産地で、高松市鬼無町・国分寺町には気鋭の盆栽園が軒を連ねる。西脇さんが参加した教室は高松市鬼無町の「花澤明春園」が主催していた。同園は松だけでなく山野草(さんやそう)盆栽なども広く手掛け、こだわりの器の品ぞろえは西日本でも有数、若手や女性ファンの開拓にも一役買っている存在だ。園主の花澤登人さんにすっかり惚れ込んだ西脇さんは、小豆島で高品質な観賞用オリーブの苗木販売に力を入れる(株)小豆島岬工房の土居秀浩さんと連携し、みずみずしい感性で消費者にダイレクトに訴える「フラワーショップ」、オリーブの深い栽培知識とノウハウを誇る「オリーブ生産者」、高い盆栽技術で産地を支えてきた「盆栽生産者」の三位一体で、新しい商品開発に乗り出した。

小さくてかわいいフォルムの「colive」

完成イメージは約25センチのこじんまりした佇まい。コンセプトはかわいくて若者層に受けるもの、ハイセンスで手軽なインテリアとして生活に溶け込む「実付き盆栽」だ。これまでもオリーブ盆栽に挑戦した盆栽生産者は存在したというが、なかなかうまくいっていない。毎年実をつけるよう育て、しかも量産ベースを目指すとなると、課題は山積みだった。

まずは実がつきやすく量産向きの品種を土居さんが選定し、「アルベキナ種」「チプレッシーノ種」に決定。各250本の挿し木苗を育てるところからスタートした。通常、小豆島では畑で大きく育てる苗づくりが前提で、なるべく小さく、しかも鉢に上げる苗づくりは異例のこと。挿し木は作業時期も限られる。「とにかく時間がかかる大変さを噛みしめました」と土居さんは苦笑する。

一方、花澤さんは盆栽鉢づくりに着手した。陶器の小石原焼で有名な、福岡県小石原地区の業者が全面協力、滋賀県の信楽焼の業者もカスタマイズメイドで応えてくれることになり、オリーブ盆栽のためのオリジナル鉢をつくる算段が整った。そんな折、ふと気づいたことがある。通常の盆栽は手作業で針金をかけて繊細な形を作り上げていくが、とても量産できない。将来的に協力農家を加えて均一な商品を生産していく体制を確立するには、苗木をはめ込んで成型する「型」が必要なのではないか。「設計と金型に非常にお金がかかりますし、たとえ思いついても実行する盆栽屋はいないでしょう。でも年間1万鉢の量産を考えるなら必要です。ファンドの助成金に背中を押してもらいました」と花澤さん。シンプルなS字のプラスチック型「オリーブ盆栽樹形制御用治具」を開発し、周囲を驚かせた。

こうした開発の間、3人が顔を合わせたのはほんの数回だという。「目標だけしっかり統一し、後はバラバラに動いて、時々修正するんです。結果的に、想定外の面白さが生まれた気がします」と土居さんは振り返る。とはいえ、商品名はみんなで知恵を出し合って「colive」に決定。ミニ盆栽のこじんまりした風情、オリーブの丸みを思わせる頭文字の「c」などがあいまって、全員納得のネーミングとなった。

花澤さんが開発した「樹形制御用治具」
型にはめて固定し、数年がかりで形作っていく

「島に来てもらう」工夫を

商品デザインや宣伝、販路開拓は西脇さんが担当。デザイナーに依頼した都会的なロゴやパッケージで洗練された雰囲気を打ち出し、新商品としてインターネットでも発信している。SNSやイベントでの反応は上々。現在量産体制を整えつつあるが、苗木の成長や盆栽としての完成には数年かかるため、まずはブランドの知名度を高め、少しずつ販売を拡大していく予定だ。

SNSにはアフターメンテナンスのノウハウを発信したり、愛好家が集い盛り上がる場所としての機能も期待しているという西脇さん。「いずれはオリーブ盆栽の品評会なども開催してみたいですね。coliveをきっかけに、小豆島に来てくれる人を増やすのが次のステージになるでしょう」。3人が情熱を注ぐ小さな鉢から、オリーブの島の新しい可能性が開くかもしれない。

新商品にかける熱き想い!

花実の付き方や切り戻しの技術など、まだまだ栽培も管理も試行錯誤の連続。植物相手で思うようにいかないこともありますが、やるからには思い切りよく、とことん頑張ります!

(写真 左から)
代表取締役 土居 秀浩 氏
店主 西脇 美津江 氏
園主 花澤 登人 氏、花澤 美智子 氏

pensée(パンセ)

会社概要

所在地 小豆郡土庄町上庄1956-1
電話 0879-62-2538
URL http://www.penseess.com
従業員数 1名
採択年度 平成27・28年度

株式会社小豆島岬工房

会社概要

所在地 小豆郡小豆島町室生字小南甲167
電話 0879-75-1303
URL http://www.misaki-koubou.jp
従業員数 2名
採択年度 平成27・28年度

花澤明春園

会社概要

所在地 高松市鬼無町鬼無748-3
電話 087-881-2847
URL http://www.hanazawa-bonsai.com
従業員数 3名
採択年度 平成27・28年度